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グランツーリスモのエンジンサウンドについて(第3回)
Posted by | July 23, 2014

ダイノパックは、もともとエンジンの出力を測る「ダイナモ」の一種だが、タイヤ付きのクルマをまるごと載せるローラー式とは違い、負荷をかけるためのダイナモはホイールをはずした駆動輪の車軸のホイールハブに直接接続する。
ハブ直結なので、ローラー式と違って、タイヤスリップの心配がないから、ダイナモの負荷も自由自在に変えられる。
つまり静止した条件で、走行状態のクルマをほぼ完全に再現できる。
アクセル全開なのにエンジン回転数は3000rpmで上がりも下がりもせずにピタリと止める・・・みたいな手品のようなことがダイノパックだと簡単にできてしまう。
これはまるで、エンジンサウンドを収録するための機械のようではないか。
以来、アミューズの田名邊さんにお願いしてはエンジン音の収録を行うようになった。
だから、グランツーリスモに収録されているクルマのサウンド・クオリティが良いものはだいたいダイノパック収録のものだ。

じゃあ、全部のクルマをダイノパックで録ればいいじゃん、という話なんだけど、シャシーダイナモというのは、ゲーム制作集団がほいほいと使えるようなヤワな設備ではないし、その設備をクルマの取材を行う世界中に運搬するのも簡単ではない、というところが壁だった。サウンドチームの人が足りないというのも大きい。
音源収録がクルマの台数の増加に追いついていない、のが最大の問題。
でもまあ、それはやるしかないだろうと思っている。機材の小型化も進んでいるし。

あと、GT5以降にとりわけ音がチープになった、という感想の背景として、音源そのもののクオリティより、音の鳴らせ方が先にちゃんとしてしまった、というのも確実にある。リアルなサラウンドに対応させるために、空間内にある膨大な音源の位置や音の放射方向を正確に計算するようになり、しかもオートゲイン・コントロールによって、シーン全体の音量が決してオーバーフローせずに歪みなく出力されるようになった。結果としてGT4までは音量過多で歪みまくっていたエンジン音が歪まずにクリーンに鳴るようになって、古い音源だと音源の貧弱さがそのまま出てしまう。

音を正確に聞かせるには避けて通れないオートゲイン・コントロールも、人間の感覚に合わせていくのは結構大変だ。
前走車に追いついたり、盛大にスキール音を鳴らすと、自分のエンジン音が聞こえなくなる、とかはオートゲイン・コントロールの副作用だ。
上記以外にも、「音が創れる」サウンドエンジニアがいなくなってしまった、というのも痛い。
20年前には「録れないなら作る」というサウンド・シンセサイズの文化は確実にあったのだけれど、サンプラー全盛になってからは、音を発音原理まで遡って、それらしい音を作り出せる人材が減ってしまった。

これらの問題系について、現在は改善のまっただ中にあって、近いうちに結果は出せるだろうと思うけれど、それにしても、やはり人は足りない。

というわけで、「グランツーリスモのサウンドはオレが改善できるぜ」というサウンドエンジニア、レコーディングエンジニア、募集です。音の神秘に技術的に迫り、世界を旅して音を録るのは楽しいと思うよ。

 

編集部より:サウンドエンジニア、レコーディングエンジニアを募集いたします。
recruit_sound@polyphony.co.jp 宛にメールをお寄せください。お書きいただく内容・スタイルは自由といたします。
ご応募は日本語と英語に限らせていただきます。メールによる選考を通過された方にのみ、こちらからご連絡させていただきます。

 

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