ファイティング、スポーツ、パズル、フリー、そしてレーシング部門はグランツーリスモ6を用いて争われる日本発の総合e-Sportsイベント「Red Bull 5G」の決勝戦が、12月21日 秋葉原 「AKIBA SQUARE」にて開催されました。レーシング部門のグランツーリスモ6では9000人近くものオンライン予選を勝ち抜いた猛者達による史上最高レベルの列島分断東西対決。過去2年の戦績は東代表が2連勝中。その2連勝を勝ち取ってきたのがお馴染みの「YAM」「やまどぅー」の事実上の日本最強コンビ。しかし今年は両者共に地区予選でまさかの敗退!
同じブロックの地区予選でYAMを負かしたファイナリスト2名には世代交代の波すら感じさせる今年の東日本代表を紹介。
「calsonic(カルソニック)」
優勝賞品であるF1日本GP招待権利獲得という明確な目的を持つ野心家。予選大会でトップタイムを叩きだした西日本代表の打倒negiに燃える。
「ほんだ」
虎視眈々。多くは語らぬクールな振る舞いに隠された牙。予選大会ではcalsonicと共にYAMを打ち破った。東日本代表の無敗記録を総合的にアシストする。
2年連続未勝利の汚名返上を誓う西日本代表
「negi(ネギ)」
今年のレーシング部門で唯一のファイナリスト経験者。つまりそれは過去2年連続敗北を意味するが、今年の予選大会ではわずか2周で最速タイムをマークしアタックを終える伝説を作った。速さ、安定感、勝負強さ、すべてにおいて現在トップクラスのGTプレイヤー。
「アユム」
公式プレイヤー紹介映像ではビッグマウスな発言を繰り出しヒールなキャラクターを前面に押し出した。グランツーリスモ歴も今回の5Gの予選からというフレッシュなニューフェイス!
ここでRed Bull 5Gの勝敗システムを紹介。
5つの部門で先に3勝したチームが総合優勝となるチーム戦。つまりレーシング部門だけ勝利したとしても、他のジャンルで負け越してしまえば負けなのである。さまざまな戦術がチーム内で噛み合わない限り総合優勝することはできない。勝利するためには東西で分断されたチーム内の結束力を高める他ないのである。
大会前日に開かれた前夜祭もそのような狙いがあるのだろう。日本のゲーマーという先入観から無口なプレイヤーを想像する人も多いと思う。しかしファイナリスト経験者のムードメーカー的なリーダーが各陣営にいる影響か、全員が見事にチームに溶け込んでいる。個性豊かなキャラクターでありながら、勝利という名のひとつの目標に挑む意気込みを感じ取れた。
レーシングゲームという特性上、ステアリングコントローラーやさまざまなネットワークの調整等が必要とされるため、ポリフォニー・デジタルのクルーもテクニカルサポート役としてイベントに参加。そしてレースの環境設定に関してはドライバー同士の密なブリーフィングが必要となるため、前夜祭終了後にドライバーズミーティングが実施された。ファイナリスト全員が納得のいくベストコンディションでレースをするためには事前に意見を交わすことが必須である。
翌朝、遂に決選の日が訪れた。
東西対抗チーム戦として争われるRed Bull 5Gだが、レーシング部門は総合タイムではなく1位でフィニッシュした車両のチームが勝ちとなる。ファイナルで使用されるサーキットはレッドブルのお膝元であるオーストリアのレッドブルリンク。古くはA1リンクの名で親しまれていたクラシックサーキットだ。競技車両はレッドブル X2014 スタンダードをそれぞれのチームカラーに合わせ、東が赤、西が青だ。
決勝グリッドを決める予選レースはレッドブルリンク・ショートコースで行われた。
ほんだの単独スピンやアユムとcalsonicの接触もあり、negiが圧倒的なアドバンテージでポールポジションを獲得した。
アユムとcalsonicの接触に関しては、アユムが強引にインにねじ込んだという見方もできるが、この時アユムのマシンは縁石に載った際に跳ねてしまいコントロールにズレが生じていた。そしてcalsonicの車両に当たってしまったということがレース後に分かった。両者にとって不運といえるアクシデントではあるが、その心理的な影響を決勝まで引きずらないか不安視された。
決勝グリッドは、negi(西)、calsonic(東)、アユム(西)、ほんだ(東)、の順で決定した。
レッドブルリンク・フルコースで行われる決勝レースでも波乱は起きた。ファーストラップの1コーナーの進入で4位スタートのほんだがアユムをパスしポジションアップ。しかし次のコーナーでほんだのスリップから抜け出したアユムがインに飛び込む。
しかし、またしても先行していたcalsonicに接触。この2人を引き寄せてしまうレッドブルリンクの魔物の仕業か。この瞬間、当てられたcalsonicは左手を上げ怒りをあらわに。そしてアユムは自らが原因となる2度目の接触ということで完全に戦意を喪失しているようにも見えた。
結果として予選レースと同じ状況となり、ポールポジションから快調に飛ばすnegiの独走を許す羽目に。
その後、4位まで転落していたアユムがほんだを抜き返し3位にポジションアップを果たすも、negi、calsonic、アユム、ほんだ、の順位は入れ替わらずそのままフィニッシュ。
YAMを彷彿とさせる他を圧倒する走りをしたnegiがレーシング部門初勝利を西日本にもたらした。
2位.calsonicは猛追敵わず。3位.アユムと4位.ほんだもこの差でフィニッシュ。
無敗神話を誓った東日本代表の野望は真冬の夜のサイバーシティー「AKIBA」に散った!
レーシング部門唯一のファイナル経験者であるnegiが他のファイナリストを圧倒する完全試合だったが、今回のレースで多くのオーディエンスを印象付けたのはアユムとcalsonicの接触。そしてその後の彼らの対応の潔さに感動すら感じた者も多いはずだ。レース後アユムは目頭を熱くさせcalsonicに謝罪。そこに全員が歩み寄りアユムを励ます光景。
「自らがアクシデントの要因となり、ライバルの順位を後退させてしまった場合、相手の順位を回復させてから復帰する。」というスポーツマンシップ溢れる対応が、モータースポーツを愛する者達を感動させた。
そして、レーシング部門以外でも西日本が東日本を圧倒し、近年稀に見る圧倒的な差で5Gの優勝旗は西日本の手に渡った。
戦いを終えた4人に今大会を振り返ってもらった。
1位.negi(西日本)中央左
「3度目の正直でようやく勝てた! でもやっぱりYAMさんを倒して1位になりたい!」
2位.calsonic(東日本)中央右
「もう今回のレースのことは忘れました。次のこと、先を見てる!」
3位.アユム(西日本)左
「今回のトロフィーはねぎさんに貰ったようなものだけど、いつかいろんなゲームで勝利していっぱい飾れるようになれたらいいな!」
4位.ほんだ(東日本)右
「思い返すことは何もない。この先も流れにまかせるまま!」
遺恨を残さない「これがレースだ!」という前向きなビジョン。ライバルでありつつも実は大の仲良し。イベント後も秋葉原の街に繰り出しアーケードゲームやシミュレーターでリターンマッチをしたとか。まるでGTアカデミーの卒業生のような雰囲気すら感じたRed Bull 5G 2014は幕を閉じた。
本来であればレーシング部門以外のバトルの様子もお伝えしたいところですが、各ジャンルすべてにそれぞれの濃密なドラマがあり、ハイレベルな戦いが繰り広げられたため、レーシング専門のPit Stopブログでは到底その魅力をお伝えしきれません。詳細なレポートはRed Bull 5G公式サイトをぜひチェックしてみてください。